先に結論―受け取れる。ただし「出し続ける」手続きが2つある
日本の年金は、海外に住んでいても受け取れます。国外に出た時点で権利が消えるわけではありません。ただし、受け取り続けるためには手続きが2種類あります。移住のときに一度出す「住所・受取金融機関の届出」と、その後は毎年出し続ける「現況届」です。後者を止めると年金の支払いも止まります。
そしてタイに住む場合、税金の扱いで一つ大きな注意点があります。海外移住の一般論として語られる「租税条約による所得税の免除」が、タイでは使えません。手取りの見込みを立てる前に、そこを確認してください。
移住のときに出す届出―期限は年金支払日の前々月末日
年金を受けている方が海外に居住して年金を受け取る場合、「外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届」の提出が必要です。海外の金融機関を年金の振込先として指定するときは、金融機関名や口座番号等を記載したうえで、口座証明、小切手帳の写し、通帳の写し等を添付します。
提出期限は年金支払日の前々月末日です。移住にまつわる日本側の手続きの中で、最も早く締切が来るのがこれです。出発の直前に思い出しても間に合いません。
振込先は、海外にお住まいの方でも日本国内の金融機関を指定することができます。ただし「ゆうちょ銀行」を振込先として指定することはできません。海外の金融機関への送金は国ごとに送金通貨が指定されていて、個々に希望する通貨を指定することはできません。日本から海外の金融機関へ送金するときは、SWIFT(またはBIC)と呼ばれる金融機関を特定するための送金コードが必須です。国や地域によっては、SWIFT以外の情報も求められます。
年金生活者支援給付金を受けている方が海外に転出した場合、この給付金は支給されません。年金事務所に「年金生活者支援給付金 不支給事由該当届」を提出することになります。20歳前の傷病による障害基礎年金も、海外に転出した場合は支給されません。
毎年の現況届―誕生月の末日までに、在留証明を添えて
海外にお住まいの方が年金を受け取る場合は、年1回「現況届」の提出が必要です。提出期限は誕生月の末日です。日本年金機構は誕生月の3カ月前に現況届を送付しています(2025年4月に誕生月を迎える方から、それまでの前月下旬送付が変わりました)。
日本国籍の方は、お住まいの国の日本領事館等が発行した在留証明を添付します。加給年金額等の対象者がいる方は、その対象者の証明も必要です。添付する書類の証明日は、誕生月を含めて過去6カ月以内に証明を受けたものが有効です。早すぎる時期に取った証明は使えません。
手続きは電子化が進んでいます。2025年5月27日から、一部を除く全ての在外公館で、電子的に作成した「在留証明」(e-証明書)の取得が可能になりました。マイナンバーカード等の電子証明書をお持ちの方は、e-証明書を添付してe-Gov電子申請で現況届を提出することもできます。タイの日本大使館・総領事館まで足を運ぶ回数を減らせます。
外国籍の方は、在留証明に代えて、自国の戸籍や住民票に相当するもの、または第三者の証明(公的機関や公証人等の証明書またはサインがあるもの)を添付します。
現況届が届かないとき、日本に一時帰国しているとき
郵便事情等で誕生月の中旬までに現況届が届かないときは、日本年金機構からの郵便の到着を待たずに、年金受給権者現況届に在留証明等を添付して提出してください。用紙を印刷できない場合は、任意の紙に基礎年金番号、氏名、生年月日、住所および提出する理由を書いて、在留証明等を添えれば足ります。
日本に一時帰国中で在留証明等を添付できず、期限までに現況届を提出できないときは、パスポートや戸籍抄本等、本人確認または健在確認ができる書類を持って、近くの年金事務所へ行きます。必要書類の詳細は年金事務所に確認してください。
届出の提出先は、日本での最終住所地を管轄する年金事務所か、日本年金機構への郵送です。日本語以外の文書を送るときは、できる限り日本語訳を添え、アルファベット大文字とアラビア数字で記載するよう求められています。
税金―タイは租税条約の年金条項がなく、免除が使えない
ここが、タイを選ぶ場合に最も取り違えられやすいところです。受けている年金が老齢年金であって、日本と滞在国が年金の受け取りに関する租税条約を締結しているときは、手続きをすることで税法上の非居住者が納めるべき所得税の免除を受けることができます。この場合、「租税条約に関する届出書(様式9)」を2部提出します。
ところが日本年金機構は、日本と租税条約が締結されていても、年金条項がない等の理由で適用にならない国や地域がある、として、カナダ、タイ、スウェーデン、中国のマカオ、アメリカ合衆国のプエルトリコやグアムなどを挙げています。つまりタイでは、この免除の手続き自体が使えません。
「海外に移住すれば年金の所得税が免除される」という説明を目にしたら、それが自分の行き先に当てはまるかを必ず確かめてください。タイの場合、免除がない前提で手取りを見積もる必要があります。年金以外の税(確定申告や納税管理人)については、海外転出届を出す前ににまとめています。
支払日は年6回。ただし外国送金の入金日は国ごとに違う
年金は原則として年6回に分けて、偶数月の15日に支払われます。15日が土日または祝日のときは、その直前の平日です。ただし外国送金で支払われる場合は、各国の金融機関ごとに支払える日が異なります。金融機関変更の届出をした後の支払いについても同様です。
家計の組み方に関わる点です。日本にいたときと同じ日に同じ額が入る前提で毎月の支出を決めると、着金のずれと為替の動きが重なったときに苦しくなります。移住直後の数カ月は、余裕を持った現金を日本側に残しておく判断もあり得ます。
医療費の負担は年金とは別の制度で動きます。日本の健康保険がタイでどう扱われるかは、タイの医療と日本の健康保険にまとめています。
よくある質問
日本の年金は、海外に住んでいても受け取れますか?
受け取れます。ただし手続きが要ります。海外に居住して年金を受け取る場合は「外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届」を提出し、その後は毎年1回「現況届」を出し続ける必要があります。届出を怠ると支払いが止まります。
年金の振込先は、日本の口座のままでもいいですか?
日本国内の金融機関を振込先に指定できます。ただし「ゆうちょ銀行」は指定できません。海外の金融機関を指定する場合は、口座証明や通帳の写しなどを添えて届け出ます。送金通貨は国ごとに指定されていて、希望の通貨を個別に選ぶことはできません。
現況届はいつまでに出しますか?
提出期限は誕生月の末日です。日本年金機構は誕生月の3カ月前に現況届を送っています。日本国籍の方は、お住まいの国の日本領事館等が発行した在留証明を添付します。添付する証明の証明日は、誕生月を含めて過去6カ月以内のものが有効です。
タイに住むと、年金の所得税は免除されますか?
免除されません。老齢年金を受けていて、日本と滞在国が年金の受け取りに関する租税条約を締結している場合は、手続きにより非居住者が納めるべき所得税の免除を受けられます。しかし日本年金機構は、租税条約が締結されていても年金条項がない等の理由で適用にならない国として、カナダ、スウェーデン、中国のマカオなどと並べてタイを挙げています。
年金はいつ振り込まれますか?
年金は原則として年6回に分けて、偶数月の15日に支払われます。15日が土日または祝日のときは直前の平日です。ただし外国送金で支払われる場合は、各国の金融機関ごとに支払える日が異なります。日本にいたときと同じ日に入金される前提で家計を組まないでください。
住所・受取金融機関の届出、提出期限(年金支払日の前々月末日)、ゆうちょ銀行の指定不可、送金通貨の国別指定、租税条約の年金条項がなく適用にならない国としてのタイ、年金生活者支援給付金の不支給は日本年金機構「年金を受けている方が海外に居住するとき」(2025年12月5日更新)、現況届の提出期限・送付時期・在留証明・証明日の有効期間・e-証明書・e-Gov電子申請は同「海外にお住まいの年金を受けている方が誕生月を迎えたとき」(2026年4月1日更新)、支払日と提出先および日本語訳の依頼は同「年金を受け取り始めた後に必要な手続き」(2025年5月26日更新)で確認しました。
出典・参考リンク
日本年金機構 海外で年金を受け取るとき
日本年金機構 年金を受けている方が海外に居住するとき(2025年12月5日更新)
日本年金機構 海外にお住まいの年金を受けている方が誕生月を迎えたとき(2026年4月1日更新)
日本年金機構 年金を受け取り始めた後に必要な手続き(2025年5月26日更新)
年金の届出様式・提出期限・租税条約の適用範囲は変更されることがあります。手続きの前に、日本年金機構の該当ページまたは年金事務所で最新の内容をご確認ください。